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生涯投資家(村上世彰) ブックレビュー13

こんにちは、

アジュベです。

 

今日は、10年以上前、”村上ファンド”で有名になった

村上世彰氏の著書のご紹介です。

 

生涯投資家
生涯投資家
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村上 世彰
文藝春秋
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村上氏は大学卒業後、通産省(現経産省)で16年勤務したあと、
M&Aコンサルティングという投資顧問会社を立ち上げ、
”物言う株主”として様々な上場企業へ出資すると同時に、
経営者に対して経営に関する提言をされていた方です。
 
ファンドの規模は順調に成長し、ピーク時には全体で
4000億円ほどを運用するまでになっていました。
しかし転機は2006年に訪れます。
ライブドアニッポン放送株取得に関するインサイダー取引疑惑で逮捕・起訴され、
2011年に結審するまで法廷で戦う日々が続くのです。
 
事実と考えを織り交ぜながら展開
 
本書はそんな村上氏の自伝であり、通産省時代にエジプトでイベント運営に
奔走する様子から、現在のNPOフィンテック企業への投資まで
投資と提言の話を中心に描写されています。
また、投資対象となった企業の経営者の動きや、オリックス宮内義彦氏、
ヨーカ堂伊藤雅俊氏ら、周囲のプレーヤーのとのやりとりの事実だけでなく、
村上氏の考え・哲学も書かれており、氏がいかに日本の企業を良くしていこうと
志していたのかが分かります。
 
村上氏の熱い思いに感銘を受ける
 
逮捕当時、テレビでは「お金儲けって悪いことですか?」という発言や、
”学生時代に株で儲けて高級外車を乗り回していた”など、
およそインサイダー取引とは関係のないことが中心に流されていたと記憶しています。
それに対して私なりに、”お金を儲けることは全然悪くない”と考えたり、
”逮捕されるほどのことはしていない、人間的に嫌われてしまったから逮捕されたんだ”
と思ったりはしていました。
しかし、村上氏の人となり、国家や企業、人に対する熱い思い、
特に、”コーポレート・ガバナンスを日本の企業に浸透させる”という
一貫した投資家としての活動目的については、
本書を読むことで初めて触れることができ、感銘を受けました。
 
村上氏は”コンサルタント”である
 
世間一般では村上氏は投資家のイメージが強いと思いますが、
コンサルティングファームに勤めている私が読んだ限りでは、
経営者に対して提言し続ける氏は、まさにザ・コンサルタントだと感じました。
株を購入して株価を下支えし、さらに経営に関するコンサルティングを行う、
どう考えても企業にとってこの上なく優しくてありがたい、最高の存在です。
 
村上氏の考えが当たり前になることが日本生き残りの鍵
 
しかし、まだ”物言う株主”という言葉が残っているほど、株主が経営者に対して
提言することの価値を多くの人が理解できていないのが日本の現状です。
これには半ば呆れる次第ですが、あと5年以内には、
投資家、経営者、従業員、その他ステークホルダーの利益向上のために
コーポレート・ガバナンスを向上させるという考え方が
もっと世の中に浸透してほしいと思います。
5年というのは、変化にそれ以上の時間をかけていると、
日本が世界から取り残されてしまうという理由からです。
10年といっていては遅すぎるでしょう。
 
投資家やコンサルタント、官僚といったポジションの枠を超えて、
日本に活気を与えたい、国民が幸せになれるような企業のあるべき姿を作り上げたいと
志向している人にオススメの一冊です。
 
ではまた